自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

相手と自分の距離感を、絶妙に保つことの大切さ ~「サンマとカタール 女川つながる人々」に教えてもらったこと~

自分の人生を変えた出来事のひとつに、宮城県石巻市、女川町への「1泊2日 ひとり視察ツアー」があります。

 

2013年2月、日本全国の地域を盛り上げていく仕事がしたいとわがままを言って、それまで務めていた会社を退職させていただき、新しい一歩を踏み出すことにしました。
そのときはまだ、東日本大震災が起こってから2年も経っていない頃。まだまだどこの被災地もこの先の未来が描けない時期でした。

 

そんな時期に、これから地域を盛り上げる仕事がしたいと転職を決めたので、被災地の復興についての考えを聞かれることも少なくありませんでした。
もちろん、自分なりに勉強もして、自分なりの考えは持っていたのですが、答えながら「何かが違う…」という違和感がいつもあり…。そう、自分の言葉に“体温”が感じられないのです。それはそうです。被災地の方々の声も聞いたことがないのに、自分の言葉に体温があるわけがない。だから、被災地に行ってみようと考えたのです。

 

退職する会社の仕事を最後までやり切ろうと決めていたので、最終出勤日から次の会社で働きはじめるまでに、時間はほとんどありませんでした。それでも何とか空いているホテルを探し出し、1泊2日で宮城県石巻市、女川町を巡ってきました。

 

まさに「百聞は一見にしかず」。
被災地については、それまでも情報収集をしてきたつもりでしたが、それは上っ面の情報で、“リアル”ではありませんでした…。

 

地元で暮らし続けるか迷っている人、仮設住宅で暮らす人、病院で働く人、商店街でお店を再会させた人、地元紙の記者さん、町営バスやタクシーの運転手さん…。
たった2日間でしたが、約50人ほどの人とお話をさせていただいたのですが、そこにはそれぞれの人のリアルがあって、体温を感じることができました。関東にいて入ってくる情報とは、まったく違う。これほどに違うのかと、愕然としたものです。

 

それから2年後、陸前高田や気仙沼に行かせていただく機会がありましたが、やはり外から得る情報と、その土地で得るリアルな情報では、まったく違うことを改めて実感させられました。
リアルを知る。体温を感じる。本当に大切なことです。
この1泊2日で、リアルな情報を知る本当の価値と、本音を聞き出すインタビューのコツを学びました。たった3年前の出来事ですが、女川での体験がなければ、自分の人生は大きく変わっていたと思います。

 

さて。
「サンマとカタール 女川つながる人々」です。

 

女川町の人々の生活に密着したドキュメンタリー映画で、ひとりひとりがそれぞれの立場で、複雑な思いを抱えながらも前を向き、新しい女川町をつくろうともがいている。その姿に心打たれました。
映画を観ていて、改めて教えられたのは、つくり手(製作者)と出演者(地元の人々)の心の距離感が大切だということ。距離感は近づきすぎても、客観視できないのでダメです。ただ、遠すぎては、本音が聞こえてこない…。
「サンマとカタール 女川つながる人々」は、その距離感が絶妙な映画だと思いました。

 

映像だけではなく、すべての仕事に、あるいはすべての人間関係に、相手と自分の距離感がある。相手の本音が聞こえてくる距離感で、でも感情移入しすぎて、冷静な判断ができなくならないようには距離感を保つ。映画を観ていて、改めてその大切さに気付かされました。

 

まあ、そんな小難しいことは抜きに、ドキュメンタリー映画として純粋に感動できる映画ですので、皆さんにもぜひ1度、観ていただきたいと思います。
私もいつか、こんな映画を撮ってみたい…。