伊東屋の万年筆コーナーの販売員さんと、話をするのが好きです。会話が楽しく、万年筆の知識が深まるのはもちろん、仕事に役立つ学びも多いからです。特にお客さんをファンにするためのヒントは、過去にどのくらいいただいたでしょうか。
伊東屋の販売員さんは、お客さんの「1」の質問に対して、少なくても「5」の答えを返してくれます。「5」の答えを分解すると、「1(質問に対する回答)」+「4(専門家としての提案)」。思わず、「なるほど…」「そうか!」「へぇ~」とリアクションしてしまう提案が、客としてはとても嬉しいわけです。
当たり前のようで、意外にこれができる小売りは少ないものです。
下手に何かを伝え、後々のクレームになることを恐れて必要最低限のことしか説明しない小売りもありますが、伊東屋の販売員さんは積極的にどんどん提案をしていく。面白いのは、同じ質問をしても、ひとりひとりの担当者がしっかりとした考えを持って、異なる提案をしてくれることです。
これは会社としてブレているわけでなく、ひとりひとりが専門家として、自分の考えを持って提案をしてくれるので、どれも納得できる。これを個人的に、「伊東屋サプライズ!」と勝手に命名しています。余談ですが、万年筆のクリーニング道具を自作しているのも、「伊東屋サプライズ!」でした。
話を元に戻して…。
会社が用意した答えではなく、“専門家としての自分”の答えを提示する。ここに共感をしてもらえる要素があり、ファンになってもらえる要素があります。
モノを売りたいなら、そしてファンをつくりたいなら、誰かに質問されたとき、提案のない回答はしないこと。これ、本当に大切なことです。