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日本人は「ものづくり」は得意だけど、「ものがたり」が聞こえてこない

「日本人は“ものづくり”は得意だけど、“ものがたり”が聞こえてこない」
今週人から聞いた言葉で、もっともガツンときた言葉です。少なからず、このように思っている人(特に外国人)がいるそうです…。

 

この話を聞いてまず思い浮かべたのは、日本の地方です。
去年からいろいろな場所に行かせていただいていて、その場所に住む人と話す機会が多々あるのですが、決して少なくない人が「自分たちは、発信が下手。想いを伝えていくのが下手」という話をされます。

 

なぜ発信が下手なのか?
SNSなどでの発信する方法やテクニックを知らないという意見もあれば、日本人の奥ゆかしさというのか、「語らない美学」みたいなものが根付いているからだという声もあります。もっと言うと、「いいものをつくれば売れる」と思っているから、語る(発信する)必要はないと考える人も多い…と。私が見てきた限りの話をすると、どの地域もそのすべてが該当します。

 

だから、もったいないと思うのです。なぜなら、素晴らしいものがたりがあるから。

 

今、ニッポン手仕事図鑑を通して、職人さんと話す機会もありますが、その職人さんの商品を買う消費者と話す機会も多々あります。そこで強く実感をするのは、「商品を買いたいのではなく、その商品をつくった人の想いに触れたい、その商品に隠されたものがたりを聞きたい」ということ。ただ消耗するだけの“モノ”ではなく、愛着を持って長く使い続けられる“存在”がほしいのだなと。愛着のないモノばかりに囲まれた生活は疲れますから…。

 

冒頭の言葉を、今は完全否定することができません。
でも思うのは、「ものがたり」がないのではなく、「ものがたり」を語っていないだけ。地方で暮らす人たちも、職人さんも。そう、日本全国にはたくさんの素晴らしいものがたりがあります。

 

ものづくりにフォーカスを当てるのではなく、ものがたりにもっとフォーカスがあたれば、日本のものづくりの環境は大きく変化するはず。だから、もし語らない美学やいいものをつくれば売れるという考えがあれば捨てて、ものがたりを語ってほしいと思っています。

 

と書いておきながら、そこまで悲観していないのは、私が会った職人さんやつくり手の皆さんすべてが、「ものがたり」を持っているからです。そして、自分の想いを丁寧に、熱く語ってくれたからです。そう、語る場所さえあれば、ものがたりはもっと広まっていきます。

 

職人さんや農家などのつくり手さんたちが語れる場所が、もっとたくさんできればいいな、と。そんなことを今、強く願っています。もちろん、ニッポン手仕事図鑑も、そんな語れる場所のひとつであり続けたいと思います。