自分の仕事は、自分でつくる

明日の仕事のヒントと、行動力の高め方

仕事で大切なことを、少年野球のカメラマンのバイトが教えてくれた

学生時代、何か学びになるバイトがしたくて、必死に面白そうなバイトを探していた時期がありました(確かまだ雑誌だったフロムエーをパラパラとめくりながら…)。

 

最終的に候補に残ったのは、少年野球の試合を撮影をするカメラマンと、作家の灰谷健次郎さんのアシスタント。どちらか本当に迷ったのですが、カメラの仕事をやってみたかったので、少年野球のカメラマンのバイトを選びました。
カメラマンと言っても、カメラを自前で用意できて、フィルムさえちゃんと交換ができれば、誰にでもやれるバイトです。面接も一応ありましたが、落とされる人はたぶん、ひとりもいなかったと思います。

 

今振り返ってみると、このバイトを選んだことは本当に大きかった。大切なことを学ばせてもらいました。

 

それはまだ、現場に出てから2回目か3回目くらいだったと思います。あるふたりのカメラマンと現場で一緒になりました。そのふたりのカメラマンから休憩中にこんなことを言われました。

 

「このバイトをやっているのは、プロのカメラマンが多いんだよね。お小遣い稼ぎに。事務所(雇い先)も腕のいい人から使っていくから、君はまだ学生だし素人だから、あまり仕事が回ってこないかもね。実際に仕事が回ってこないって嘆いているカメラマンも多いから…」

 

「カメラって奥が深いから、本気でカメラの仕事をしたいなら、もっとカメラのことを勉強しないと。レンズのこととか、絞りとか、技術的なこともあまりよくわかってないでしょ?」

 

確か、こんな感じだったと思います。
そう言われたとき、「そうだろうな。プロに勝てるわけがない…」と素直に頷きました。面接のとき、みんなに仕事が回るわけじゃないと言われてもいましたから…。そのときは「仕事が回ってこなかったらそれでいいや」という軽い気持ちで、でも仕事があるときは真剣に、楽しくやろうと決めました。

 

それから仕事を辞めるまでの数ヶ月間、なぜか不思議と、仕事がどんどん回ってきました。少年野球の試合はほとんどが土曜日と日曜日ですが、休みなくスケジュールが埋まっていったのです。
バイトを辞めるとき、最後に事務所の人がその理由を教えてくれました。

 

ひと言で言うと、それは「視点」。他のカメラマンは「投げた」「打った」「取った」のときだけ、シャッターを押していました。
それに対して私は、自分が野球をやっていたこともあり、選手や保護者がどういう写真が欲しいのかが少なからずわかっていたので、塁に出たときにベンチを見ている写真、ベンチで応援している写真、ネクストバッターズサークルで緊張しながら待っている写真、ピッチャーのところに選手が集まっている写真、相手チームの選手と話をしている写真など、プレイをしているシーンだけでなく、そこに物語を感じる写真をかなりの枚数撮っていました。

 

1試合に使っていいフィルムの数も大体決まっていたので、他のカメラマンさんたちはプレイの写真に集中したのかもしれません。でも私はあえて、そんな写真を撮り続けました。結果、事務所の人は「プロ」ではなく、素人学生の自分を選び続けてくれたというわけです。

 

どんな仕事をしても、明らかに自分より知識、経験、実力がある人がいます。でも、戦い方次第では、勝てることもある。「諦める前に、考えてみよう」。そんなことを学生時代に教えてくれた、貴重なアルバイトでした。